日本のダム 八汐ダム

八汐ダムは、栃木県那須塩原市に位置し、那珂川水系鍋有沢川に建設された**表面アスファルト遮水壁型フィルダム(アスファルトフェイシングフィルダム)**です。

堤高:90.5m(この型式としては世界一)
堤頂長:263.0m
総貯水容量:11,900,000㎥
有効貯水容量:7,600,000㎥
用途:揚水発電専用(塩原発電所・出力90万kW)
竣工:1994年
管理者:東京電力リニューアブルパワー

ダムの特徴と発電システム
八汐ダムは、**塩原発電所の上池(八汐調整池)**を形成し、下池(蛇尾川ダム)との間で水を循環させる純揚水式水力発電を行います。
発電所は地下300mの人工空洞内に設置
1号・2号機:1994年運用開始(計60万kW)
3号機:1995年に可変速揚水発電システムを導入し、総出力90万kWを達成

問題と対応
● 漏水問題
湖底から**大量の漏水(1日7.6万㎥)**が確認される
貯水量減少 → 河川から不正取水で補填 → データ改ざんが発覚

● 行政処分
2007年、国交省は塩原発電所の水利使用許可を取り消し
再稼働には漏水是正工事が必須とされ、対策が進められた

● 緊急対応(中越沖地震の影響)
2007年、柏崎刈羽原発の停止により、夏の電力逼迫時に暫定稼働
2009年、水利使用再許可を得て段階的に運用再開

周辺環境と見学情報
八汐ダムは日光国立公園内にあり、建設時には環境配慮が施されました(緑化・資材の地元調達など)
かつては「TEPCO塩原ランド」というPR施設がありましたが、2011年の原発事故以降閉鎖
現在は見学不可、立ち入りも制限されています

八汐ダムの魅力と意義
項目 内容
ダム型式 世界一の高さのアスファルトフェイシング型
主目的 揚水式発電(塩原発電所上池)
発電能力 総出力90万kW(東京電力の基幹電源の一つ)
課題 大規模漏水とデータ不正問題への対応

八汐ダムは、先進的な発電システムと型式のチャレンジを象徴する存在である一方で、設計上の問題や不正の教訓としても語り継がれる、非常に興味深いダムです。